抄録
ふく射熱と対流熱の共存する暖房室で熱環境の質を一定とする条件で考えるとき,ふく射熱を増加させた場合の外壁貫流損失の増減は,外壁の室内側対流熱伝達率によって決定される.ふく射熱が変化しても貫流損失の変化しないときの熱伝達率を,この論文では臨界熱伝達率と称し,Gebhartの吸収係数を用いて理論的考察を行った.この結果から臨界熱伝達率の近似推定式を求め,計算例によって,その精度の確認および臨界熱伝達率の基本的性質を明らかにした.その結果,Gebhartの吸収係数を求めれば,以後の複雑な熱収支式を解くことなく,ふく射暖房などの採用による貫流損失の増減に関する基本的な情報が得られることがわかった.