本研究の目的は,床冷房の至適温熱環境の範囲を提案することである.実験は,気温と床表面温を組み合わせた条件に,被験者16名を用いておこなった.人体が床面から受ける熱伝導と熱放射による冷却の効果により,空気冷房設備よりも床冷房設備の方が室内空気温度をより高い側に設定でき,省エネルギーに寄与できる可能性を示唆した.以下に得られた知見を示す.1)床冷房の中立温冷感が得られる伝導修正作用温度は27.0℃を得た.また,中立温冷感が得られる伝導修正平均皮膚温は33.7℃を得た.2)投げ足位姿勢での床冷房の至適温熱環境条件は,伝導修正作用温度が24.5〜29.5℃の範囲となることを提案した.3)床冷房は,至適伝導修正作用温度の範囲内では,床表面温を気温よりも1〜2℃程度低く設定することで,熱伝導と熱放射の冷却効果により熱的な快適性が得られる温熱環境をつくることが可能であることを示した.床暖房設備の年間利用を考慮すると,設備の効率的な運転も可能となり,省エネルギー効果が期待できる.