2008 年 33 巻 134 号 p. 1-10
本報は土壌熱源ヒートポンプシステム設計・性能予測ツールに関する研究の第3報である。まず、複数埋設管を有する土壌熱源ヒートポンプシステム全体の性能を予測するための、地中熱交換器の配管設計に対する熱媒温度の計算手法を示す。次にこの計算手法を用いて地中熱交換器の配管経路の違いがもたらすシステム性能の相違や、温暖地域に鋼管基礎杭を地中熱交換器として用いた場合について検討を行った。結果として、暖冷房に対して8m×20本の基礎杭を用いた場合、予想されたCOPは暖房期間平均で5.0、冷房期間平均で5.6となり、基礎杭を用いた土壌熱源ヒートポンプシステムは温暖地域でも十分に普及する可能性を十分に有していることが示された。また、温暖地域の住宅への土壌熱源ヒートポンプシステムを想定し、地中熱交換器の埋設間隔に対する、地中温度や熱媒温度、システム性能の相違を検討したところ、埋設管間隔を2m以上設ければ、温度変化や性能に大きな差が現れないことが示された。さらには採放熱が年間を通じて周期的に行われることを想定し、地中熱交換器を格子状、もしくは直線状に配列した場合について、埋設管間隔に対する温度変化を検討したところ、格子状の地中熱交換器配列で3m、直線状配列であれば2m以上の地中熱交換器間隔を設けることにより、温度変化にはほとんど差が現れないことが確認できた。以上より、上述した範囲が適切といえる埋設管間隔であると結論付けられた。