2010 年 35 巻 164 号 p. 1-9
鉄鋼業の中でも省エネルギーの取り組みが進んでいる高炉メーカーに比べ,実態が明らかでない電気炉メーカーを対象に,排熱回収等省エネルギー方策の実態調査および省エネルギー可能量の推定を行った.まず,電気炉メーカーに対するアンケート調査を行った結果,所内あるいは所外における熱エネルギーの有効利用を検討したことがない事業所がそれぞれ3割以上,9割以上あることがわかった.その一方で,今後の所内あるいは所外での熱エネルギーの有効利用についてはそれぞれ8割以上,4割以上の事業所が肯定的な意向を示していた.つぎに標準的な電気炉を対象とした冷却水温度および排ガス温度の実測調査を行った結果,投入エネルギーの66%が粗鋼の生産に使用され,残り34%が排ガス等として失われることがわかった.この熱収支の推測値をもとに,電気炉排熱回収による蒸気生産について検討した結果,例えば粗鋼生産量80t/hの電気炉において11.9t/hの蒸気を生産できる可能性が得られた.