2016 年 41 巻 229 号 p. 23-33
エネルギーシミュレーション(ES)とCFDの連成解析に関する既往研究を整理し、本研究で構築した建築物の総合ESツールBESTとCFDの連成解析手法の位置づけを示した。また、連成解析手法の概要に加え、総合ESツールで扱う照明電力等のデータを内部発熱としてCFDへ受け渡すデータ連携手法についても示した。提案手法の有用性を示すため、実在する事務所ビルを対象とし、同手法を用いた連成解析とES単体計算との比較を行った。両結果を比較すると、空調処理負荷及び建物全体のエネルギー消費量については概ね同等の結果が得られたが、室内環境については日射の影響が大きい時間帯において差が生じた。また、内部発熱が偏在する状況においては、各ゾーンの空調処理負荷比率や室内環境に影響を与えることを示した。本報では温熱環境の空間分布が生じにくい事務所を対象としたが、連成解析により、ES単体計算では再現が困難な室内環境の分布や快適性の評価、内部発熱偏在による空調システムの挙動が再現可能であることを示した。