人間環境学研究
Online ISSN : 1883-7611
Print ISSN : 1348-5253
ISSN-L : 1348-5253
絵画評価におけるDeath Positivity Biasの検討
堤田 賢人白岩 祐子
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2020 年 18 巻 1 号 p. 31-36

詳細
抄録

死者は生者よりもポジティブに評価される傾向がある。death positivity biasと呼ばれるこの現象は、シナリオ実験と実際の雑誌記事の両方で確認されている。絵画の世界でも同様に、ゴッホやモジリアーニなど、死後になって評価が高まる画家の存在が知られている。死後に評価が向上する現象は、ゴッホのように傑出した才能をもつ特別な画家以外でも生起するのだろうか。つまり、death positivity biasは絵画全般において生起するのだろうか。この点を検証することが本研究の第一の目的であった。第二の目的は、上記でdeath positivity biasが確認されたとして、それが画家の死による効果なのか、あるいは作品の希少性の高まりによる効果なのかを検討することであった。筆者らはシナリオ実験を行い、架空の無名画家の死亡条件と存命条件、さらに活動停止条件で、絵画および画家への評価を比較した。分散分析の結果、death positivity biasは確認されなかった。この結果は、先行研究がターゲットとした実業家や一般人などとは異なり、画家は死による恩恵を受けにくいことを示している。death positivity biasの発生境界条件や今後の研究の方向性が議論された。

著者関連情報
© 2020 人間環境学研究会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top