2022 年 20 巻 2 号 p. 135-141
教師が小学生の好ましくない行動を改めさせるために、どのような叱り表現を用いるかによって生徒の反応は異なる。本研究は、5種類の叱り表現に対する生徒側の発話意図認知、発話表現への嫌悪、不満、反省、行動改善意欲を調べることを目的とした。掃除をさぼっている生徒を注意するという場面想定で小学生の参加者に回答を求めた。主な結果は、次の通りである。①直接行動要求とセルフコントロール要求の表現は、概して教師の発話意図をポジティブに解釈されやすく、行動改善意欲を含む望ましい反応を招きやすい。②権威的脅し、否定的人格評価、突き放しの表現は、概して教師の発話意図をネガティブに解釈されやすく、相対的に行動改善意欲を含む望ましい反応を招きにくい。③表現に関わらず発話意図のポジティブな認知が他のポジティブな反応をもたらし、ネガティブな認知が他のネガティブな反応をもたらすことが示唆された。本研究の知見は、小学生に対する教育コミュニケーションの中で、教師が効果的な叱り発話表現を用いるためのメタ認知的知識として活用されることが期待される。