抄録
幼い子供を持つ母親にとって、円滑な育児を行うためには周囲の人々の協力が不可欠である。夫との関係効力感が低い母親は、夫と協力して子育てをすることのハードルが高いかもしれない。そのような場合、自分の両親や義理の両親、および地域の高齢者のサポートに頼ることが有効である。しかし、夫との関係効力感が低い母親は、他者一般を避けやすく、高齢者に対するエイジズムを抱きやすいと考えられる。本研究では、幼い子供を持つ日本人の母親(N = 476、20~52歳)を対象にオンライン調査を実施し、夫との関係効力感とエイジズムの関連について検討した。調査では、参加者が抱くエイジズム、夫との関係効力感、夫へのアタッチメント、参加者および夫の1日あたりの育児時間、参加者の年齢、子供の年齢、子供の性別、世帯年収について尋ねた。結果、夫との関係効力感が低い参加者ほどエイジズムの程度が高かった。この関連は、夫へのアタッチメントやデモグラフィック変数を統制してもなお顕著であった。よって、夫との関係効力感が低い母親ほどエイジズムを持ちやすく、それが高齢者からの支援を受ける妨げになる可能性がある。今後、本研究で得られた知見が、幼い子供を持つ母親が抱くエイジズムの軽減、および育児における世代間協力の促進を目指す老年学、心理学的な試みにつながることを期待したい。