抄録
スーパーエイジャー(SA:エピソード記憶が非常に良好な高齢者)に関する既存研究は、主として脳画像所見に焦点を当てており、その行動特性に関する検討は十分ではない。本研究の目的は、日本の高齢者SAが記憶以外の認知領域でも優れたパフォーマンスを示すか、および同年齢の高齢者と比べて基本的身体機能に差異がみられるかを明らかにすることであった。データは八雲研究および東山研究から得た。75歳以上の地域在住高齢者を、ウェクスラー論理記憶検査の成績に基づいて、SA群(n = 87)または対照群(n = 71)に分類した。参加者は、4つの認知機能検査(記憶および非記憶課題)と4つの身体機能評価(例:握力、歩行速度)を受けた。その結果、SA群は文字流暢性を除き、記憶(エピソード記憶)および非記憶領域(情報処理速度、意味流暢性、実行機能)を含むほぼすべての認知課題で対照群より有意に高い成績を示した。一方、歩行速度、筋力、バランス機能などの身体機能指標では、群間に有意差は認められなかった。これらの知見は、SA群がエピソード記憶に加えて複数の認知領域においても優位性を有することを示している。また、身体機能については、認知機能が平均的な同年齢者と大きな差がないことも明らかになった。したがって、高齢者の健康増進戦略においては、認知機能の低下予防のみならず、認知機能と身体機能の双方に着目する必要があると示唆される。