鉱山地質
Print ISSN : 0026-5209
秋田県松木鉱山の泥岩中の黒鉱鉱床
黒田 英夫
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1978 年 28 巻 151 号 p. 313-323

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抄録

松木鉱山のA鉱床は全く泥岩中に産することで特異であり,高品位の黄鉱からなる。鉱床は7つの単位鉱体からなり,また鉱床は粗粒多孔質鉱体と細粒縞状鉱体とに分けられる.両者とも母岩の泥岩の変質相,黒色粘土化帯に産出する.鉱床の中心から外側へ全体として,硫化鉱体,脈石鉱物帯,黒色粘土化帯の累帯配列が認められ,それぞれの内部にも,鉱体内における黄鉱と黒鉱,脈石鉱物帯の重晶石レンズ,炭酸塩鉱物レンズと珪質レンズ+団塊のように,平面的に外側に向けての帯状配列がある.砂質有孔虫化石は鉱体のみならずその上下盤に産出する.底棲有孔虫と鉱体の産状とは,この鉱床がM2泥岩下半分の堆積後に,海水を多く含む未固結泥岩中に生じたことを示す.先駆的火山活動が弱いために生じた比較的還元性の環境下で鉱化作用が進行したことが,一般の黒鉱鉱床と異なるA鉱床を生成した原因と考えられる.

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© 資源地質学会
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