鉱山地質
Print ISSN : 0026-5209
秋田県深沢黒鉱鉱床地域の熱水変質の地球化学的特徴
井沢 英二吉田 哲雄斉藤 了
著者情報
ジャーナル フリー

1978 年 28 巻 151 号 p. 325-335

詳細
抄録

深沢鉱床は秋田県北鹿鉱床地区のほぼ中央部に位置する典型的な黒鉱鉱床である.深沢鉱床地域のフェルシック火山岩類は黒鉱鉱化作用に関連した熱水変質を受けている.層状鉱床下盤の火山岩はMg緑泥石,絹雲母を特徴とし,長石を欠く変質帯を形成している.新期の火山岩も含めて,鉱床周辺にはFeMg緑泥石―絹雲母―長石を特徴とする広範囲の変質帯が発達している.さらにこの外側には続成作用によって生じた沸石―モンモリロン石帯が認められる.
鉱床下盤の火山岩の変質に伴う化学組成の変化としてはNa2OとCaOの減少とMgO,SそれにAsの増加が認められた.これらの特徴は島根県の石見鉱床地域でも同様に認められる.しかし鉱床から数km離れた所に産する弱変質の火山岩(沸石―モンモリロン石帯)のCI含有量を比較すると,石見地域では300~500ppmであるのに対し深沢地域では20~40ppmと低いことが明らかになった.この理由として,深沢地域の熱水活動が黒鉱鉱化後も長期にかつ広範囲におよんだため火山岩類中のCI溶脱が進行した可能性も考えられる.
変質岩の化学的変化の傾向を見るためAI2O3-MgO-(CaO+Na2O+K2O)図を用いて検討した結果,深沢および石見の場合黒鉱鉱化作用に伴う変質作用の特徴としてMgOの増加が明らかであった.カナダにおける始生代の塊状硫化物鉱床の場合にも同様な傾向が認められる.これは海水の関与した熱水変質の特徴と考えられる.

著者関連情報
© 資源地質学会
前の記事 次の記事
feedback
Top