鉱山地質
Print ISSN : 0026-5209
西南北海道上国鉱山又八鉱床のマンガン・鉛・亜鉛・銀鉱化作用
石山 大三松枝 大治中村 威
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1989 年 39 巻 218 号 p. 403-416

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抄録

上国―桂岡鉱床地域の又八鉱床の磁鉄鉱スカルンとマンガン・鉛・亜鉛・銀鉱脈鉱床の形成に関連する中新世の鉱化作用が,個々の鉱体の鉱物共生と鉱脈の構造・鉱化ステージ・初生的帯状分布および生成環境に基づいてまとめられている.
鉱化作用の順序は,初期から末期にかけて,以下の5つの鉱化ステージに区分される.I期:磁鉄鉱スカルンの形成,II期: Pb-Zn(Cu)石英脈の形成, III期:Pb-Zn-(Mn)石英脈の形成, IV期: (Pb)-(Zn)菱マンガン鉱鉱脈・菱マンガン鉱鉱脈・塊状菱マンガン鉱鉱床の形成, V期:鉄マンガン苦灰石脈の形成.又八鉱床の鉱化ステージI期からV期までの鉱化作用は, polyascendent zoningを示す鉱化作用と密接に関連している.
又八鉱床の3種類の主要鉱脈鉱床は, Pb-Zn-(Mn)石英脈・縞状(Pb)-(Zn)菱マンガン鉱鉱脈・菱マンガン鉱鉱脈である.Pb-Zn鉱鉱石・縞状菱マンガン鉱鉱石・菱マンガン鉱鉱石の3種類の鉱石タイプは,鉱石品位に関連している.鉱石品位に基づけば,又八鉱床の北西から南東にかけてPb-Zn帯・中間帯・菱マンガン鉱帯の順に配列する,Pb-Zn-(Mn)石英脈は,又八鉱床のPb-Zn帯中に認められる傾向があり,一方,菱マンガン鉱鉱脈は,菱マンガン鉱帯に広く分布する.水平および垂直的帯状分布は, Pb-Zn-(Mn)石英脈・(Pb)-(Zn)菱マンガン鉱鉱脈および菱マンガン鉱脈の形成と関連する鉱液の繰り返し上昇によって起こる鉱化作用により形成された.
又八鉱床での鉱床生成温度は初期から末期にかけて徐々に低下する.鉱床生成温度の変化は,複数の鉱化作用に伴う鉱化ステージの進行と対応している.

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