資源地質
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豊羽鉱山における銀鉱化作用
太田 英順
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1992 年 42 巻 231 号 p. 19-32

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抄録

日本最大の銀産出量を誇る豊羽鉱山の鉱化作用は前期と後期に区分され,後期はさらにA,B,C,D,Eのサブステージに細分される.後期鉱化作用の影響は前期生成脈中でも随所に見られる.前期脈中に産する銀鉱物は自然銀・輝銀鉱とエレクトラムであるのに対し,後期鉱脈中ではAg-Sb・Ag-Pb-SbおよびAg-Pb-Bi硫塩鉱物,安四面銅鉱―砒四面銅鉱固溶体,Ag-Sn系鉱物,鉱物明未定のAg-In鉱物(AgInS2),エレクトラムと多様である,坑内および鏡下における観察とEPMA分析に基づき,前期脈中の輝銀鉱とエレクトラムは後期鉱化作用の産物であり,豊羽鉱山に産する銀の大部分はサブステージBとCにもたらされたことが結論された.前期脈中では後期鉱液中のAg-S錯体と前期鉱石中の赤鉄鉱との間の酸化還元反応により,また後期脈中では鉱液と周囲の低塩濃度地熱水との混合に起因するAg-Cl錯体の解離により,それぞれの場所で同時に銀の沈殿が進行したと説明できる.

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