抄録
酸性もしくはアルカリ性の塩化ナトリウム水溶液中におけるモリブデン硫化物精鉱の溶解メカニズムに関する研究を行った。溶解実験は,モンゴル国・エルデネット鉱山産のモリブデン硫化物精鉱粉末を10 mass %の塩化ナトリウム水溶液と混合し,このスラリーを313kの電解セル内で1Aの定電流で電解し,MoS2の溶解反応を解析した。6時間の溶解実験後,MoS2の溶解の電流効率は,アルカリ性の浴の場合97%,酸性浴では92%であった。また,電解セルの電極をスラリーと分離せずに電解を行った場合の電解効率は82%であった。電解酸化プロセスにおけるモリブデン硫化物の溶解は,主として電気化学的に生成したオキシクロライドによることを反応浴の化学分析により示した。酸性浴中での溶解後の残査はSiとAlを含んでいたが,アルカリ浴の残査は精鉱中の主たる不純物であるSi, Al, CuおよびFeを含んでいた。この結果より,溶液からこれらの不純物を析出除去できることが明らかとなった。