抄録
アジアの石炭の生産が急増している。2005年度の中国の生産高は実に22億トンを超えた。また年々坑内採掘の割合が多くなってきている。中国は既に95%に達し、他のアジア諸国も今後は坑内採掘が中心となるであろう。アジアは人口が多く密集している上に、炭鉱が都市近郊の平地部に多く立地しているので、地盤沈下の地表物件に及ぼす影響は鉱山保安とともに深刻な問題であることは、国内の経験からも十分に予測される。
著者らは最新の情報技術である地理情報システム(GIS)を高度に活用した採掘にともなう地盤沈下の革新的な予測システムを開発した。このシステムは、徐々に進行する複雑な形状の採掘切羽の拡大を時間的、空間的にモデル化し、この応答としての地表の沈下5要素を伝統的な沈下理論に基づいて、確率的な影響予測も含めて面的に精密に解析するものである。
このシステムを中国のある炭鉱の採掘計画に適用して、地表の建物、河川、鉄道などの挙動を厳密に予測した。このシステムを用いると、これまでのPCを用いた解析に比べてビジュアルな三次元表示などができるほか約3桁計算効率が向上するので途上国の地盤沈下の問題解決に大いに寄与することが期待される。