歯科医学
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口腔感染病巣から分離したレンサ球菌および腸球菌の抗生物質感受性
柳 春植小中島 諭一
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1990 年 53 巻 1 号 p. 63-85

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抄録

細菌感染症の治療において化学療法は必ず行われる. したがって, 病巣に存在する病原細菌の抗生物質感受性を知ることは不可欠である. そこで本研究では, 口腔の化膿性の感染病巣から高頻度に検出されるレンサ球菌, および病巣内に残存すると治癒を長びかせる可能性のある腸球菌を口腔感染病巣から分離し, 種の同定を行ったのち, 分離菌の抗生物質感受性を測定した. また, 腸球菌にCEXを作用させたときの形態変化を透過型電子顕微鏡で観察した。
その結果, 口腔レンサ球菌としてStreptococcus milleri17株, S. sanguis10株, S. morbillorum10株, S. mitior5株, Streptococcus sp. 7株, および腸球菌としてS. faecalis3株が分離された.
感受性測定の結果, レンサ球菌はEM, CLDM, JM, ABPCおよびPIPCに高い感受性を示した. 腸球菌はABPC, AMPCおよびEMに中程度の感受性を示したが, 全般的にはいずれの抗生物質に対しても感受性は低かった.
nitrocefinを用いたβ-ラクタマーゼ活性の検出実験では, レンサ球菌および腸球菌のいずれからもβ-ラクタマーゼ活性は検出されなかった.
腸球菌細胞にCEXを作用させると, 感受性株では形態変化をともなわずに細胞はそのまま崩壊したが, 非感受性株では細胞伸長が観察された. その結果, 腸球菌のCEX非感受性の原因として, CEXとペニシリン結合蛋白質との親和性の低下がその1つとして考えられることが示唆された.

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© 1990 大阪歯科学会
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