歯科医学
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有限要素法による乳臼歯窩洞の形態ならびに修復材料と歯痛発現との関連についての研究
松島 伸一嘉藤 幹夫
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1991 年 54 巻 6 号 p. 467-482

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抄録

乳歯の温度刺激に対する歯痛の発現についての研究は極めて少ないのが現状である. そこで, 私たちは, 下顎の第一乳臼歯および第二乳臼歯における窩洞の形態と修復材料の熱伝導率の相違による修復物および歯質内の温・冷熱分布について有限要素法を用いて解析し, 歯痛発生温度との関連について解明しようとした.
その結果, 以下の結論を得た.
1. 正常な下顎の第一乳臼歯および第二乳臼歯の咬合面に約57℃の温熱刺激または, 約21℃の冷熱刺激を加えたとき, それぞれ歯痛が発現する閾値に到達し, その閾値は髄角部で最初に発現した.
2. 下顎の第一乳臼歯および第二乳臼歯の咬合面修復時には, 温度刺激が一定であれば, 熱伝導率の低い修復材料ほど歯痛発現の温度が低くなった.
3. 下顎の第一乳臼歯および第二乳臼歯の隣接面の側室が, 深くなればなるほど, 熱伝導率の高い修復材料ほど歯痛発現の温度がいっそう高くなった.
今回の研究によって, 乳臼歯修復窩洞の形態と修復材料の熱伝導率とが歯痛の発現に密接に関連していることが示唆された.

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© 1991 大阪歯科学会
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