歯科医学
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線毛を有するレンサ球菌の口腔内分布と付着性状
岡 憲一北條 博一
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1993 年 56 巻 3 号 p. 285-297

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抄録

 頬粘膜, 歯垢および唾液からレンサ球菌を分離し, 選択した線毛を有する菌株の同定, 分布および付着性状について検索した.
 全分離菌349株のうち, 頬粘膜由来38株, 歯垢由来45株および唾液由来36株に線毛が観察された. 各部位における線毛形態の分布では, 周毛性線毛を有する菌株は頬粘膜由来26株(68.4%), 歯垢由来32株(71.1%)および唾液由来34株(94.4%)で, 残りの菌株は局在性線毛を有した. 同定の結果, 分離菌はすべてStreptococcus salivariusS. oralisとのいずれかに属した. S. salivariusの分布比率は, 頬粘膜42.1%, 歯垢55.5%および唾液66.6%であった. S. salivariusの線毛はすべて周毛性で, S. oralisでは周毛性と局在性がみられ, その比率は同じであった.
 疎水性は, S. salivariusがもっとも高く, ついでtype DのS. oralis, type AのS. oralisの順で菌種, 線毛形態による差は認められたが, 部位別による相違はみられなかった. 赤血球との凝集性は, いずれの菌株にも認められなかった.
 上皮細胞への付着菌数はS. salivarius(669/cell)がもっとも多く, type DのS. oralis(457/cell), type AのS. oralis(232/cell)の順であった. 部位別による相違は認められなかった.
In vitroプラーク形成性は, S. salivariusの24株すべてが陽性で, 13株にとくに強い形成性が認められた. 一方, S.oralisのプラーク形成性は弱く, type Dは, ほとんどが陰性であった.
 以上の結果, 線毛を有するレンサ球菌の分布は, 歯垢と唾液ではS. salivariusが, 頬粘膜ではS. oralisが優勢で,口腔各部位で相違が認められた. また, S. salivariusS. oralisに比べて, すべての付着性状試験において優れており, 病原ポテンシャルが強いといえる.

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© 1993 大阪歯科学会
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