歯科医学
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有床義歯装着後の咀嚼筋活動からみた順応過程に関する研究
奥田 啓之
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1995 年 58 巻 2 号 p. 93-109

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抄録

適正に製作された完成義歯において, 装着後ある程度の期間を経て安定した機能を営むことが義歯の"馴れ"として臨床的に観察されている. このような義歯の"馴れ"について新義歯装着から経日的に咀嚼時の咀嚼筋筋電図を記録, 分析し検討を行った.
 旧義歯に最小限の修正を行うことによって, 新義歯を装着するまでの間安定した咀嚼機能の維持が可能であることを確認した, 臼歯部に咬合支持のない患者5名に新義歯装着後の経日的変化を筋電図およびMKGを用いて観察し, 以下の結果を得た.
 新義歯装着時の筋電図的観察において, かまぼこ咀嚼時のduration, interval, cycle time, duration preceding tooth contact (DPTC), duration outlasting tooth contact (DOTC), および interval, cycle time, activity preceding tooth contact (APTC), activity outlasting tooth contact (AOTC), APTC+AOTCそれぞれのCV, またレーズン咀嚼時ではduration, DPTC, DOTC, および APTCのCVに装着後1日から1週後にかけて変動がみられまた旧義歯との差も大きかったが, それ以降4週まで経日的に安定した推移をとった. これらの多くの筋電図パラメータから, 一応, 新義歯は装着後1週には馴れとしての咀嚼筋筋電図の規則性を獲得したと考えられる. レーズン咀嚼時のintervalおよびcycle timeにおいて4週間後まで新義歯では低下, 旧義歯では増加する経日的推移をとり食品差が認められた.
 これら装着後1週以降安定したパラメータのなかでとりわけdurationとDPTCのCVおよびかみしめ時の平均電位において, 新義歯のCVの低下とかみしめ時の電位の増大, 逆に旧義歯でのCVの増加と電位の低下によって装着後1週に新旧両義歯が交差し, その後も新義歯は安定した推移を示し, あまり使用しない旧義歯での機能低下も反映されていると考えられ, これらのパラメータが義歯の"馴れ"の評価にとくに有効であることが示唆された.

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© 1995 大阪歯科学会
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