歯科医学
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博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
HAP-Al_2 O_3溶射インプラント材植立後の骨修復と微細血管構築に関する実験的研究
武田 憲明
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1995 年 58 巻 3 号 p. g109-g110

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抄録

歯科インプラント材のうち, 生体活性のあるハイドロオキシアパタイト・アルミナ溶射チタニウム材の人工歯根を実験的に植立し, 術後の骨組織修復と, これに貢献する血管構築について, 経時的かつ三次元的に観察を進め, 両者の関連について検索し, 歯科インプラントに基本的知見を示唆した. 材料および方法 ハイドロオキシアパタイト(HAP)・アルミナ(Al)をチタニウムのシリンダー型およびブレード・ベント型に溶射被包した人工歯根を, 成ニホンザルの上顎前歯部と下顎臼歯部の抜歯後60日経過した顎骨に植立した. 植立した動物は, 5日, 1, 2, 4, 8, 12週それぞれ脱血安楽死させた. シリンダー型を植立した動物は5日と12週で, ブレード・バント型を植立した動物は全各期間について, アクリル樹脂微細血管注入法によって, 各個体の総頸動脈からアクリル樹脂を注入した. そして人工歯根を中心に周囲構造を含む領域の軟組織を腐食し, 骨・微細血管同時鋳型標本を作製して走査電顕で, また連続組織切片を光顕で観察した. 観察結果 植立5日では, シリンダー型ではHAP-Al界面の対向面で旺盛な新生洞様血管を認め, ブレード・バント型では肩部から歯槽骨縁までは肉芽組織でみたされ, 一部に幼若な新生洞様血管を多く認めた. これらの洞様血管は既存血管から新生したものであったが, 骨小柱の新生はまだ認められなかった. 1週では, ベント内や肩上部に一次海綿骨小柱が新生し, とくに植立時のチャンネル溝には新生洞様毛細血管が伸展し, 新生骨が認められた. 2週では, ほとんど界面全体にわたって毛細血管と骨小柱の新生をみた. 界面に迫る骨小柱は舌状を呈し, これに束状となった洞様毛細血管が伴走していた. この骨小柱はチタニウムやセラミック界面のものとは形態的に異なり, その伸長性は高く, つねに洞様毛細血管を伴っており, 舌状骨小柱と仮称した. 4週から8週では, 舌状骨小柱は増長し, さらに骨小柱の終縁は界面で拡大して扇状となり骨性癒着を呈していた. しかし, HAP-Al界面から新生する骨小材は認められなかった. 新生骨組織の外周ではすでに毛細血管のは通常形態となり, 休止状態の血管叢が完成していた. 12週では, 骨小柱はほとんど8週頃に完成した新生骨小柱の密性化したものと, 通常の骨髄の骨小柱として成長完成したものであった. しかし, 肩部から上方の頸部への移行部ではこれを支持する骨小柱が完成し, シリンダー型チタニウム歯根にみられる有茎骨小柱と同様の形態を示していた. 以上のことから, 植立後2週にみた舌状骨小柱の界面への伸長と癒着状態は, 生体不活性材へのそれとはまったく異なり, HAP-Al界面への骨性癒着とインプラント体の osteointegrationはチタニウム界面よりも早期に開始され, また完成することが判明した. 新生骨組織はとくにブレー卜ベント型の肩上部とベント内で早期完成をみた. HAP-Al界面は12週で骨組織によって取り囲まれ, その外周の血管構築はほとんど整理された状態になっていた.

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© 1995 大阪歯科学会
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