歯科医学
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耳下腺腫瘍に関する臨床的研究
服部 一秀西尾 正寿
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1996 年 59 巻 2 号 p. 146-158

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抄録

1982年から1995年の13年間に加療した目下腺腫瘍27例について臨床的ならびに病理組織学的観察を行い, 以下の結果を得た.
1. 27例の目下腺腫瘍は男性15例, 女性12例で性差がなく, 60歳代に7例と最も多く発症し, ついで50歳代6例であった.
2. 超音波診断および唾液腺造影は正診率が高く(82%, 89%), RI診断(99mTc,67Ga)法に比べて有用であった. また超音波診断法は簡単な操作で実施できるので補助診断法の第一選択とすべぎであり, X線CTは腫瘍の局在を知るうえに最も有効な方法であった.
3. 良性腫瘍患者21例に対して核出術(6例)あるいは腺葉部分切除術(15例)を施行した(1例を除いて顔面神経は保存)が, 結果は極めて良好で再発なく経過した. 悪性腫瘍患者6例に対して耳下腺亜全摘術(3例)あるいは腺全摘術に加えて頚部郭清術および下顎区域切除術(3例)を施行した(全例で顔面神経は切断)が, 6例中5例は局所再発や遠隔転移により死亡した.
4. WHOの分類(1991)では. 良性腫瘍は21例でそのうち17例は多形腺腫であり, 悪性腫瘍は6例でその半数は腺癌であった.
5. 多形腺腫の4例は病理組織所見から良性・悪性を明確に鑑別できず, 中間型(準悪性)としたが, これらは悪性変化を示す可能性が高く, 慎重な経過観察が必要である.
6. 耳下腺腫瘍の診断・治療に際し最も重要なことは術前に良性・悪性を鑑別することである. 診断は臨床症状, 理学所見および画像診断(超音波診断, 唾液腺造影, RI診断(99mTc,67Ga), X線CT)により総合的になされるべきである.
7. 耳下腺腫瘍に関する課題は中間型に属する症例に対して, 病理組織学的見地からさらに検討されることにあると考えた.

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© 1996 大阪歯科学会
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