歯科医学
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歯性感染症由来Prevotella buccaeのnew quinolone耐性
栗林 信仁
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1997 年 60 巻 3 号 p. 221-231

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抄録

New quinoloneは歯性感染症の治療に用いられ, それに対する耐性菌も検出されているため, ヒト口腔由来ofloxacin (OFLX)耐性嫌気性グラム陰性桿菌のnew quinolone耐性機構について検討した.菌株はPrevotella buccae (P. buccae) ATCC 33574 (OFLX感受性株), P. buccae 31-8 (OFLX低度耐性株, 閉鎖性膿瘍由来)およびOFLXを用いてP. buccae 31-8から選択したOFLX高度耐性株P. buccae 31-8-R4と31-8-R5を用いた.OFLX高度耐性株のDNAは親株のそれとよく結合し, 酵素産生性も両者でよく一致していた.供試菌に対する6種のnew quinolone (OFLX, levofloxacin, sparfloxacin, lomefloxacin, tosufloxacin, norfloxacin)のMICは, 106 CFU/ml接種のとき, 寒天平板希釈法においてP. buccae ATCC 33574では1〜8μg/ml, P. buccae 31-8では0.5〜16μg/ml, P. buccae 31-8-R4では16〜64μg/mlおよびP. buccae 31-8-R5では16〜>128μg/mlであった.
発育に影響をきたさないcarbonyl cyanide m-chlorophenylhydrazone (CCCP) 2.5μg/mlをOFLX (1/32〜1/2 MIC)と同時に添加すると, OFLX耐性株の増殖が抑制された.同様の傾向は2.5μg/ml CCCPと残りのnew quinoloneを1/8 MIC添加しても認められた.CCCPによるP. buccae細胞内へのOFLXの蓄積はOFLX感受性株では認められなかった.しかし, OFLX低度および高度耐性株では, CCCP無添加の値よりCCCP添加時の値が1.07〜1.24倍に増加していた.供試菌株の外膜タンパク質のSDS-PAGEパターンを比較すると, 75.8 kDaタンパク質は耐性化に伴って消失したが, 29.4と63.2 kDa外膜タンパク質は新たに検出され, 35.2と47.3 kDa外膜タンパク質量が多くなっていた.
以上の事実は, P. buccaeのnew quinolone耐性にnew quinoloneの排出と外膜タンパク質によるnew quinoloneの透過障害が関与している可能性を示唆している.

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© 1997 大阪歯科学会
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