歯科医学
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イヌ骨欠損部における歯の自家および異種移植の組織反応
益野 一哉西川 哲成伊藤 雄一佐々木 昇田中 昭男
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2003 年 66 巻 1 号 p. 55-62

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抄録

近年,歯根完成直前の歯を用いることによって臨床的に歯の移植成功率が飛躍的に高まり,歯の移植は再び注目されてきた.しかし,歯に対する拒絶反応や新生骨の形成など周囲組織の反応に関する基礎的な報告は少ない.
 われわれはイヌの骨欠損部に自家および異種の歯を埋入し,それぞれの組織反応と骨の形成を検討した.雄性ビーグル成犬3頭に全身麻酔下で,左右の大腿骨3か所に骨髄に達する直径4.3 mmの穴を開けた.これら欠損部を無埋入のもの,イヌの自家歯を埋入したもの,そしてアリザリンレッドで標識した異種のラット歯を埋入したものの3群に分けた.埋入3週後に,カルセインを投与し,その1週後,全身麻酔下で動物を安楽死させて大腿骨を摘出し,ホルマリンで固定後、2分割して標本を作製した.標本の一方は未脱灰標本のまま共焦点レーザ走査顕微鏡的に,他方は脱灰したのちHE染色し,光学顕微鏡的にそれぞれ観察した.
 その結果,無埋入の場合,欠損部に梁状の新生骨が形成され骨髄が認められた.イヌの自家歯の場合,破歯細胞によるセメント質および象牙質の吸収,さらに歯の周囲に接して形成された新生骨による欠損部の一部修復がみられた.異種のラット歯の場合,象牙質の表層が吸収され,その周囲は炎症細胞の強い浸潤を伴う肉芽組織が,さらにその周囲をとリ囲むように新生骨が認められたが骨形成量は無埋入,そして自家歯の移植の場合と比較して少なかった.自家歯は吸収されると同時に新生骨で置き換わったが,異種歯は炎症性肉芽で取り囲まれ,新生骨の形成も少なかったことから自家の抜去歯の保存によって将来の活用が望めると考えられる.

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© 2003 大阪歯科学会
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