歯科医学
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集団における口腔保健状態評価への回帰直線の応用
堀内 浩司上村 参生神原 正樹
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2003 年 66 巻 4 号 p. 270-278

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抄録

現在まで口腔保健状態の評価は,う蝕や歯周疾患の疾患量の大小で行われてきているが,年齢特性のある歯科疾患において,集団対応の口腔保健状態の評価方法が確立されていないのが現状である.そこで,歯科疾患,とくにう蝕と年齢との間の直線関係に着目し,得られた直線式による地域口腔保健診断法を試みた.昭和32〜平成11年度まで6年ごとに実施された8回の歯科疾患実態調査結果を用い,5〜15歳と20歳以上の2つの年齢群に分けて,年齢別一人平均DMF歯数と年齢との関係に回帰分析による直線式の当てはめを行った.なお,集計分析には,Microsoft Excel 2000を用いた.
その結果,各年度における5〜15歳と20歳以上の2つの年齢群の一人平均DMF歯数と年齢との関係に当てはめた直線式の決定係数R^2は0.93〜0.99の間にあり,いずれの集団においても強い直線関係にあることがわかった.また,集団におけるう蝕の動向を直線の傾きと切片から示すことができた.その結果,5〜15歳の年齢群におけるう蝕の増加は,昭和56年前後がピークであリ,その後減少傾向を示し,平成11年度では昭和38年度のう蝕経験状況に戻ってきていることがわかった.
一方,20歳以上の年齢群では,直線式の傾きは調査年度間でほとんど差が認められなかったため,成人集団におけるう蝕増加傾向は,各調査年度間では同じう蝕増加傾向を示すことがわかった.しかし,直線式の切片から,成人集団のう蝕経験状況を低くするためには切片の値(20歳時のDMFT)のコントロールが重要であると示された.
以上の結果,年齢とう蝕経験状況との関係を回帰直線に当てはめ,得られた直線式の傾きと切片を用いて評価することで,集団の口腔保健状態の評価が可能となり,年齢別変動を考慮に入れた評価も可能であることが明らかとなった.

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© 2003 大阪歯科学会
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