歯科医学
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歯列弓形態の分類 : その1 相関関係分析と主成分分析
中塚 美智子隈部 俊二岩井 康智金 基燮藤原 士郎
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2004 年 67 巻 3_4 号 p. 225-234

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抄録

【目的】歯列弓の形態分類を簡便かつ客観的に行えるようにすることを目的として,現在多<用いられているThompsonの分類基準の特徴を分析し,上顎歯列弓形態決定に影響を及ぼしている因子について検討した.【材料と方法】大阪歯科大学口腔解剖学講座所蔵の歯列石膏平行模型62例の上顎模型を用いた.肉眼的にThompsonの分類により,方形,帯円方形,帯円形,帯円V字形の4型に分類し,歯列弓を写真撮影して,等倍でプリントした.歯列上の計測点を写真上に黒点を付して表し,ノギスと分度器を用いて計測した.歯列弓上で設定した計測項目が形態上の特徴にどのような影響を及ぼしているかを主成分分析により検討した.【結果と考察】歯列弓形態は犬歯の突出度を示す(1)∠R+∠L,前歯列の彎曲の度合を示す(2)(A-B)/(C_R-C_L),(3)180°-∠(C_R-A-C_L),(4)(A-E)/(C_R-C_L),歯列弓の概形を示す(5)歯列弓長径と幅径の比率(A・B)/(M2_R-M2_L),歯列の帯円度を示す(6)前歯-臼歯移行部動径差(θ5における動径-θ4における動径)の左右和(rθ5-rθ4)_R+(rθ5-rθ4),および(7)臼歯列の形態を計測することで分類が可能になることが示された.歯列形態のうち約60%を占め最も数の多い帯円方形はどの特徴も平均的に現れている形態であるのに対し,他の形態ではそれぞれに特徴的な項目が認められる.方形は犬歯の突出度を,帯円形は前歯-臼歯移行部動径差(θ5における動径-θ4における動径)の左白和を,帯円V字形は前歯部の彎曲度合をそれぞれ他と分類する基準とすることが可能である.また主成分分析の結果,歯列弓形態は前歯列の彎曲度合,前歯部から臼歯部への移行部の形態,歯列弓の長さの3つの成分に集約でき,これら3成分の表れ方の違いにより歯列弓形態に差が生じていることが示唆された.

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© 2004 大阪歯科学会
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