歯科医学
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光刺激による摂食行動の制御に関するラット最後野構成細胞の形態学的研究
玉田 善堂諏訪 文彦竹村 明道安田 久理人
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2004 年 67 巻 3_4 号 p. 279-284

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抄録

嘔吐中枢の最後野,摂食中枢の視床下部外側野および概日リズム中枢の視交叉上根(視床下部)の相互関係について明らかにすることが,本研究の目的である.嘔吐は生体防御反応として,摂食行動の一部と考えられていることから,嘔吐と摂食行動の研究に着手した.嘔吐誘発のchemoreceptor trigger zoneは延髄の最後野およびその近傍の領域であると考えられている.最後野は,神経細胞,アストロサイトおよび有窓性内皮の洞様毛細血管の要素から構成されていることが明らかにされているが,これらの構成要素と嘔吐との関係は明らかにされていない.最後野における構成要素相互の形態学的検索を行い,この結果をもとに,構成要素と嘔吐との関係について考察を試みた.検索に際しては,雄性Wistar ratの最後野において,アストロサイトについてはglial fibrillary acidic protein (GFAP)およびvimentin,神経細胞についてはtyrosine hydroxylase (TH)の特異抗体を用いた免疫細胞化学を行った.毛細血管については,Alkaline phosphataseの酵素組織化学で精査した.この結果,最後野全域にGFAP免疫強陽性を呈するアストロサイトおよびその突起が認められた.さらに,アストロサイトの突起とTH陽性神経終末および毛細血管との間に,密な形態学的相関が認められた.また,今回の検索の結果と,最後野は室傍核を介して視交叉上核,視床下部外側野と神経線維で連絡しているという文献による検索から,最後野からの嘔吐誘発に関する情報,視交叉上核からの光刺激情報および視床下部外側野からの摂食行動に関する情報が室傍核に投射され,これらの情報が統合されて摂食行動のパターンが形成される可能性が強く示唆された.

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© 2004 大阪歯科学会
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