抄録
タイプ3金合金(AU), 金銀パラジウム合金(PD)と銀インジウム合金(AG)の3種類を組み合わせて動的抽出し, 溶出量と細胞生存率への影響を調べた.円柱状試料を円板状試料上に置き, 7日および14日間にわたって3種類の合金ならびに両形状試料の組み合わせの合計9通りについて動的抽出した.その後, 0.22μmのフィルターで濾過し, 抽出液と濾液とに分離した後に溶出量と細胞生存率とを調べた.7日間抽出の抽出液ではAU/AU(円柱状試料/円板状試料), PD/PD, AU/PDとPD/AUでCuが, AG/AG, AU/AG, PD/AG, AG/AUとAG/PDでAgが最も多かった.しかし, 異種の組み合わせでは, AGが円柱状側より円板状側の場合に各元素の溶出量は多くなった.また, いずれも抽出期間が長くなると各元素の溶出量は増加した.一方, 濾液ではAUあるいはPDを含む組み合わせでCuが認められ, 抽出期間が長くなると増加した.しかし, Au, Pd, AgとInはいずれの組み合わせでも濾液中では認められず, 摩耗粉などとして存在したと考えられた.7日間抽出の抽出液では, 細胞生存率はAU/AGとPD/AGで50%前後と低く, 次いでAG/AGで低い値であった.その他の組み合わせでは細胞生存率は70%以上を示した.14日間抽出の抽出液の細胞生存率は, AU/AG, PD/AG, AG/AUおよびAG/PDで50%以下であった.その他の組み合わせでは細胞生存率は70%以上を示した.倍数希釈によって細胞生存率は増加したが, AU/AGとPD/AGでは8倍希釈でも80%以下であった.異種の組み合わせでは, AGが円柱状側より円板状側の場合に細胞生存率は低下した.濾液の細胞生存率は抽出液の場合より高く, 摩耗粉による細胞への影響が推察された.今回の基礎的な実験から, 異種合金の混合使用で貴金属合金から組成金属の溶出や摩耗粉の生成を生じ, 細胞生存率への影響も現れた.臨床では多くの複雑な要因が存在するが, 今回のin vitro実験データからしても異種合金を組み合わせての修復には十分に考慮しなければならないといえる.