歯科医学
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歯科関連の気道・消化管異物症例
島津 薫毛利 大介城戸 仁博城山 明宏青木 秀哲湊川 徹古跡 孝和林 靖久
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2006 年 69 巻 3_4 号 p. 121-128

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抄録

大阪歯科大学附属病院において,1986年から2005年までの20年間に診断と治療にあたった歯科関連の気道および消化管の異物症例217例について,統計的観察を行なったところ,以下の結果を得た.
  1)気管支異物16例(7.3%),消化管異物179例を認めた.男性133例,女性84例で男性に多く,50歳以上の症例が56.2%を占めた.
  2)診療中の異物事故は184例(84.8%),その他の原因の異物症例は33例であった.
  3)異物事故を起こした歯科医師の経験年数をみると,5年未満の経験者が45.3%を占め,5年を超えると異物事故発生率は低下するが,何十年経験を積んでも異物事故の危険性はあった.
  4)気管支異物は歯冠修復物が14例,リーマーが1例,噴霧針が1例であり,咳反射で排出された2例を除き全例で摘出された.
  5)消化管異物179例中169例(94.4%)は胃または腸にあった.食道に異物を認めたものは4例,下咽頭にあるものは6例であった.異物の種類では歯冠修復物が132例と最も多く,歯科用器具が34例であった.
  6)診療中の異物事故は,歯冠修復物の試適・調整時に117例(63.6%),根管治療時に19例(10.3%),歯冠修復物の撤去時に16例(8.7%)が発生した.
  7)胃または腸にあった消化管異物は平均5.32日で排泄された.4日以内に74例(81.2%)が自然排泄されたが,最長90日で排泄された症例もあり経過観察の重要性が示された.なお,針状のリーマーを含めて全例で排泄した.

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© 2006 大阪歯科学会
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