歯科医学
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QLF法により測定した大臼歯咬合面の初期う蝕の1年後の変化
川崎 弘二三宅 達郎土居 貴士神 光一郎上根 昌子西田 侑平大橋 晶子村田 省三木谷 憲輔福嶋 克明神原 正樹
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2012 年 75 巻 1 号 p. 12-17

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抄録
視診により第一大臼歯の咬合面がCOと判定された児童19名に対し,QLF法による初期う蝕の評価とう蝕活動性試験を1年の間隔をおいて実施し,両者の関係を検討した.QLF法による評価はInspektor Proシステム(Inspektor Research Systems)を使用し,脱灰量と相関する指標であるΔQ(%・mm2)値を算出した.S.mutansスコアの測定はDentocult-SM® Strip Mutansを用いて行った.その結果,DMFT指数は開始時0.05本,1年後0.21本であり,非常にう蝕経験の少ない集団であることが分かった.ΔQ値の平均値は上顎第一大臼歯で-6.96から-11.27%・mm2,下顎第一大臼歯で-12.28から-19.78%・mm2へと変化し,上顎より下顎の第一大臼歯の方が初期う蝕の程度は高く,また1年後にはより進行しており,さらに,ΔQ値の初期値が大きいほど,1年後のΔQ値の進行の度合いは高いことが分かった.そして,小窩裂溝の各小窩におけるΔQ値の変化の傾向を観察したところ,半数ほどの対象者においてそれぞれの小窩は一定の変動を示さないことが分かった.また,S.mutansスコアに変化のなかった対象者では1年後のΔQ値の変化はわずかであったが,S.mutansスコアが悪化した対象者ではΔQ値は2倍近く増加していることが明らかとなった.すなわち,う蝕罹患の少ない学童集団であっても初期う蝕の進行には部位特異性が認められ,本研究では上顎より下顎の第一大臼歯の方が初期う蝕は進行しやすいことが示唆され,また,各小窩は対象者ごとにさまざまな変動を示すことから,口腔内診査においては歯単位,歯面単位の診査のみならず,S.mutansスコアの測定も併用した上で,小窩裂溝内の各部位を詳細に診査する必要のあることが明らかとなった.
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© 2012 大阪歯科学会
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