歯科医学
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歯科医師の睡眠状態と日中の活動
木下 円我柿本 和俊小正 裕
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2013 年 76 巻 1 号 p. 28-37

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抄録

歯科医師の睡眠不良は,自身の健康のみならず医療事故にもつながると考えられる.本研究では歯科医師の睡眠と日常生活を調査し,歯科医師自身の健康を維持し,かつ良好な歯科医療を施すための生活リズムを検討した.
  被験者は,大学臨床系教員4名,大学院生2名および開業医4名の10名の男性歯科医師とし,平均年齢は40.3歳であった.
  研究にはアクチグラフィを用いた.アクチグラフィは3次元の加速度計と照度計を内蔵した腕時計に似た小型の検査装置で,作動を測定して,睡眠・覚醒を高い精度で判定する.被験者の非利き腕にアクチグラフィを装着させて連続した7日間の活動量を記録した.そして,専用解析ソフトウェアを用いて総就床時間,総睡眠時間,中途覚醒時間,中途覚醒回数,平均覚醒時間,睡眠効率および日中活動量を求めた.また,被験者には入床時刻,食事時間,診療時間,離床時刻などの日中の活動を「睡眠および活動日誌」に記録させた.
  入床時刻は24時台と1時台が多く,日付が変わってから入床することが多い結果となった.離床時刻は7時台が最も多かった.入床時刻が常に24時を超えている被験者が5名あった.平均の総就床時間は6時間9分であったが,覚醒回数が19.8回あり,64分の中途覚醒時間があった.平均の睡眠時間は,5時間0分,睡眠効率は81.7%であった.
  前夜の中途覚醒時間が長くなると診療時の1分あたりの平均活動量は有意(p<0.01)に増加した.また,前夜の睡眠効率が大きくなると診療時の1分あたりの平均活動量は有意(p<0.01)に減少した.総就床時間,総睡眠時間および中途覚醒回数との関係は認められなかった.
  以上の結果より,歯科医師の睡眠状態は良好とはいえず,睡眠状態が診療に影響を与えることが示唆された.

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© 2013 大阪歯科学会
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