歯科医学
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総説
歯原性腫瘍分類の変遷および単胞性エナメル上皮腫と囊胞の鑑別
田中 昭男
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2018 年 81 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

歯原性腫瘍は歯を形成する組織細胞から発生する口腔領域に特化した腫瘍である.腫瘍細胞の由来によって腫瘍は大きく上皮性,混合性,非上皮性の3 種に分けられる.文献的に最初に報告されたのは1746 年でPierre Fauchard により行われた.その後,Pierre Paul Broca そしてSir John Bland­Sutton が歯胚の構造に応じて歯原性腫瘍を分類している.当時,歯原性腫瘍は「odontome」という名称で表されていた.Ameloblastoma およびodontoma いう用語が使用されたのは,それぞれ1930 年代および1950 年代である.WHO が歯原性腫瘍の分類を世に表したのは1971 年に書籍を刊行したときである.その後,WHO は 1992 年,2005 年,そして2017 年に改訂版をそれぞれ発刊している.1992 年までは歯原性腫瘍のみを単独で出版していたが,2005 年版からは頭頸部腫瘍の中に含めたかたちで刊行している.2005 年版では,それまで囊胞として扱われていた歯原性角化囊胞および石灰化歯原性囊胞の2 病変がそれぞれ角化囊胞性歯原性腫瘍および石灰化囊胞性歯原性腫瘍として扱われた.しかし,2017 年版では腫瘍から囊胞へ戻り角化囊胞性歯原性腫瘍および石灰化囊胞性歯原性腫瘍の名称は消滅し,それぞれ歯原性角化囊胞および石灰化歯原性囊胞として扱われることになった.このほかにも歯牙エナメル上皮腫,エナメル上皮象牙質腫およびエナメル上皮線維歯牙腫の病名も消滅し,それらはすべて歯牙腫として扱うことになった. 一方,本学附属病院における病理組織診断を1994 年1 月から開始し,2016 年末で20,000 件を超える病理組織標本を扱ってきた.最も頻度の高い症例は囊胞性病変であり,次いで癌腫性,炎症性および歯原性の病変であるが,歯原性腫瘍の頻度は少ない.小切片では病理組織学的に囊胞と単胞性エナメル上皮腫の診断は必ずしも容易ではない.しかし,全割面の標本では診断は容易である.

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© 2018 大阪歯科学会
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