2010 年 84 巻 1 号 p. 2-6
乳酸ナトリウム溶液を用い,再構築法で調製された乳酸塩/層状複水酸化物(LDH)複合体の剥離挙動を調査した。得られた複合体の底面間隔は元のLDHの0.77 nmから0.80 nmまで拡大した。ここで見積もられた層間距離は0.32 nmであることから,乳酸基はLDHの層間に平面状に単層で導入されたことがわかった。また,含まれる乳酸基の量は,反応溶液濃度の増加にともないイオン交換当量の50~80%まで増加した。ゲル状態の試料ではXRD回折ピークは見られなかったが,80℃で乾燥させたキャスティング膜では合成粉末と同様な回折パターンが観察された。さらに,得られた乳酸塩/LDH複合体は水中で透明溶液の状態まで剥離・分散し,乾燥後には元の積層構造を復元した。この剥離シートをAFMで観察したところ,幅が50~150 nm,厚さが4~8 nmのナノシートであった。したがって,得られた乳酸基/LDH複合体は,スメクタイト粘土がもつような剥離性と再積層性をあわせもつ層状物質であることが明らかになった。