マイクロクリスタリンワックス(MW)は,スティック化粧品の硬度とテクスチャーを制御するためにn-パラフィンワックスと組み合わせて広く使用されているが,その硬化と軟化という二重の効果を支配する分子要因は依然として不明である。本研究では,市販のMWを溶媒溶解度に基づいて融点の異なる四つの成分に分画した。各分画は狭い融点範囲と明確な単一ワックス硬度を示し,融点の低下にともない段階的に減少した。各分画を異なる融点の異なる3種のn-パラフィンワックスと混合してオイルゲルを調製し,ゲル硬度と結晶形態を系統的に評価した。
高融点MW分画は低添加量でゲル硬度を向上させたが,低融点分画は高い混合比率を必要とし,最大硬度が低くなった。MW分画とn-パラフィンワックスの融点が近い場合に硬度向上が最も顕著であり,融点近接性がゲル強化を支配する主要因であることを示した。結晶サイズ分析と走査型電子顕微鏡観察により,硬度向上には一般的に板状n-パラフィンワックス結晶の微細化および結晶成長抑制による形態変化が関与することが明らかとなった。
これらの知見は,MWの分子組成と融解特性がオイルゲル構造および機械的特性に決定的な影響を与えることを実証している。本結果はn-パラフィンワックス系における硬度調節のメカニズム的理解を提供するとともに,硬さと質感を制御したスティック製剤設計のための実用的な指針となる。
凝集誘起発光(AIE)性の蛍光色素2-(4-(N,N-ジフェニルアミノ)フェニル)トリプタンスリン(T2PhNPh2)と,独特なπ共役環構造による多様な光吸収・発光挙動と特定の分子のホストとして注目されている[10]シクロパラフェニレン([10]CPP)を用いて,分子間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)とAIEを組み合わせた蛍光性化学センサーについて検討した。その結果,T2PhNPh2存在下では[10]CPPの青色蛍光は消光し(FRET-on),凝集させるとT2PhNPh2の橙色蛍光を示し(FRET-on & AIE),さらにフラーレンC60を加えるとT2PhNPh2の橙色蛍光が消光し(FRET-off),分子の置かれている環境に応答した発光挙動を示すことが明らかとなった。
ボールミルの粉砕効率向上を目的とした,媒体形状の設計・評価を行った。球面調和関数を用いた数値解析により,粉砕対象物を効率的に挟み込める最適形状「OPTIPSE(オプティプス)」を見いだした。ラボスケールのボールミル実験で検証した結果,OPTIPSEは従来の球形媒体に比べて,粉砕効率が約7~16%高いことが確認された。これは,媒体形状による粉砕効率向上の可能性を示すものである。今後は工業的な操業条件下での検証を進めていくとともに,さらに高性能な媒体形状の設計手法の開発にも取り組んでいく。
近年,化学物質の国際的管理規制は急速に高度化しており,多国籍企業における法令遵守負担は著しく増大している。本研究は,中国,韓国,台湾,フィリピンの化学物質登録制度を対象に,①義務範囲,②データ要求,③研究開発(R&D)用途における登録免除,④ポリマーに関する免除,⑤成形品および不純物の定義,の五つの比較軸に基づき体系的に整理し,制度差が企業実務およびコンプライアンス戦略に与える影響を分析した。分析の結果,中国,韓国および台湾はEU REACH規則の影響を受けたREACH型制度を採用しており,代理人制度やリスクベースのデータ提出義務を備えていることが確認された。一方,フィリピンは独自の登録制度を運用しており,取扱量の大小にかかわらず物質固有のリスクに基づく総合評価を求める点が特徴的である。これらの比較結果は,企業がアジア域内での化学物質管理を効率的かつ合法的に実施する上で,統合的リスク管理体制の構築と規制調和戦略の策定が不可欠であることを示唆している。