金属ペーストは,電子デバイスの製造や回路基板の形成において重要な役割を果たす材料の一つである。金属ペーストにはバインダーとして高分子樹脂が含まれており,印刷に適した粘性が付与されることで,微細な配線や電極の形成が可能となる。さらに,プリンテッドエレクトロニクス用途においては,印刷形成体が薄く均一であることが望ましく,そのためには印刷された金属ペースト中の金属粒子が乾燥を経て,高分散状態で平坦かつ高密に充填することが重要である。
本稿では,樹脂種がもたらす乾燥膜特性を考察するため,金属ペーストの乾燥過程における粒子の充填挙動を数値シミュレーションにより解析した。数値モデルでは,各樹脂の金属粒子との相互作用性を有効Hamaker定数として計算し,実験結果と一致する傾向を確認した。また,金属粒子-樹脂間相互作用性が粒子に働く粒子間力の相対的強さに影響することを確認した。
ジケトピロロピロール顔料はじめ多くの顔料は,水素結合やπ-π相互作用等の分子間力によって,分子が規則正しく並んだ結晶状態となり発色する。筆者は,簡便なDFT計算にて,ジケトピロロピロール顔料5種について塗膜の結晶色を計算し,実塗膜色との相関性を見いだしたので報告する。
酸化チタンは化学的安定性に優れた半導体であり,比較的高い光触媒活性を示すことから,エネルギー製造など多くの反応系での利用が検討されてきた。特に,分子レベルまで微細化された分子性酸化チタン種は,より離散的なエネルギー準位となり,半導体光触媒とまったく異なった光励起状態と反応特性を示すことから注目を集めている。しかしながら,分子性酸化チタン種はきわめて不安定であるため,その安定化・固定化技術の確立は重要である。これまでに,分子性酸化チタン種の固定場として,ゼオライトやメソポーラスシリカなどのシリカ系ナノ空間材料が広く用いられきた。本稿では,その骨格や細孔表面の特性を利用した触媒設計について概説する。
化粧品分野において,感触特性は,一般に官能試験によって評価されている。しかし,官能試験は,評価者の技量や嗜好,環境要因によって結果が左右されやすいという側面がある。そのため,物理的な特性を用いた客観的な評価方法が求められている。とくに物理機器を用いた粉体の感触評価においては,液体や乳化物と比較して測定条件を規定することが難しく,ほとんど研究例がなかった。本稿では,粉体原料の感触特性を,粉体層せん断力測定装置,および圧壊力測定装置を用いて評価した事例について紹介する。また,最近のトピックスとして,X線CTを用いてプレストファンデーションの成型体内部構造を可視化し,感触に影響を及ぼす因子について検証した研究についても触れる。
有機顔料(以下,顔料とも表記)の性能を最大限に引き出すためには,顔料粒子を微細かつ安定な状態で媒体中に分散させる必要がある。そのために用いられる手法が顔料の表面処理である。これは,おもにインキや塗料用途において,ぬれや分散安定性を向上させる目的で広く利用されている。各種顔料や使用目的に応じた改良が重ねられており,その手法はきわめて多岐にわたる。本稿ではまず,分散における有機顔料の性質を解説し,その後,ロジン処理,ポリマー処理,界面活性剤処理,顔料誘導体処理,表面改質処理といった表面処理方法について説明する。