積層セラミックコンデンサ(MLCC:Multi-layer Ceramic Capacitor)は,並列に接続された内部電極とセラミック誘電体とが交互に多層積層された電子部品であり,内部電極層はNi粉を主成分とするペーストの塗布膜を乾燥して作製される。
高容量なMLCCを得るためにはNiペーストから平滑な電極層を形成する必要があることから,乾燥過程におけるNi粒子の充填挙動を把握するため,乾燥過程におけるペーストの塗膜形成過程を解析した。その結果,溶剤が一定速度で揮発する定率乾燥挙動を示す場合,より平滑なペースト乾燥膜が得られることを確認した。さらに,Ni粒子と樹脂が吸着して強固なネットワーク構造が形成されたNiペーストは,乾燥挙動において乾燥終盤まで定率乾燥が維持できることが示された。
化粧品の触感の重要な要因である「べたつき」について,サイコレオロジーの手法による数値化を試みた。化粧品の計測に適するよう,ロールに加工を施したインコメーターを用い,化粧品のタック値について,乾燥にともなう変化を経時的に計測した。その変化曲線と官能試験による「べたつき」のスコアを照合した結果,化粧品のカテゴリに応じて,変化曲線のピーク値(化粧水,ファンデーションの場合),またはほぼ乾燥に至った定常値(乳液の場合)のどちらかと,官能評価スコアに相関が得られた。測定は簡便であり,再現性,分解能とも良好であった。
化学反応の制御にとって適した反応場を用いることは重要である。有機溶媒をはじめとして多様な反応場が存在しており,それぞれが興味深い機能を有するが,筆者は層状粘土鉱物の反応場機能に着目している。層状粘土鉱物は天然に存在し,その形状や機能から古くから研究されている。しかし,その表面の平滑性に着目し,化学反応場として用いた研究は少なく,まだまだ新たな可能性を秘めた材料である。本稿では層状粘土鉱物表面に有機分子を吸着させることで溶液中とは異なる反応性を示した三つの研究例について報告する。
本稿では,肌の色や質感を評価するための化粧仕上がり評価技術について紹介する。顔画像から肌を切り出した「肌パッチ」を学習した深層ニューラルネットワーク(DNN)を開発し,化粧行動にともなう化粧感の変化やさまざまな肌評価項目の学習を行った。その結果,DNNによる化粧有無の判別精度は顔全体の目視評価を凌駕し,さらにDNNの評価値とヒトの目視評価の化粧感に強い相関があることが示された。また,化粧行動にともなう化粧感の変化や肌年齢,メイクの剤形の判別,化粧塗布直後と時間経過後の判別など,さまざまな肌評価項目においてDNNの有用性が示された。さらに,肌質感の多角的な解析にも成功し,提案法の有効性が確認された。
19世紀末に最初のアゾ顔料が誕生して以来,耐候性などの各種耐性の改良と開発が重ねられ数多くの種類のアゾ顔料が上市されて現在に至る。アゾ顔料は構造の面から溶性アゾ,不溶性アゾ,縮合アゾの三つに分類され,色相も黄・赤色を主としてオレンジ,ブラウン,青といった幅広い色相をカバーしている。そのため,製品群が多様であり,さまざまな用途で使用されている。今回は,溶性・不溶性アゾ顔料の合成工程を中心に,生産量の推移や用途・性質などの一般的概論および代表的なアゾ顔料を紹介し,化学物質管理の観点においても説明する。