色材協会誌
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研究論文
漆職人はどのように天然漆器の外観の特徴を識別しているのか
-光学画像解析による研究の試み-
下出 祐太郎大谷 芳夫安永 秀計
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2011 年 84 巻 3 号 p. 81-86

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抄録

漆塗りの熟練職人が見分けている漆物の光学特性を明らかにするため,測色と光沢測定に加えて,天然漆塗平面板が反射した画像の解析を行なった。天然漆塗り試料・合成ペイント塗り試料・フィルムコーティング試料の2つの角度から撮影した光学画像における輝度の分布を取得し,そのヒストグラムの包絡線から輝度変化曲線を抽出した。漆の専門家のみが違いを見分けるような3種の黒色平板試料の分光反射特性や光沢度に明瞭な違いは観測されない。しかし,試料の光反射画像の輝度変化曲線はガウス関数によってフィッティングされ,正規分布を示す光画像の周縁の輝度変化において,天然漆塗り試料は輝度分布曲線の面積が最も狭く,その標準偏差が最も小さい。さらに,試料法線と反射画像取得角間の角度が大きくなると,天然漆塗り試料のみ,その輝度分布曲線の面積と標準偏差が減少する。

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© 2011 一般社団法人 色材協会
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