抄録
酸化チタンは紫外線を照射すると表面の有機物を分解することから,環境浄化材料として広く研究されている。しかしながら,電荷分離効率が低く,酸化力に比べて,還元力が弱い。近年,無機クラスターであるヘテロポリ酸を酸化チタンと複合化する検討が実施され,水中・空気中での有機物の分解活性が向上することが報告された。このような系ではヘテロポリ酸が電子スカベンジャー,もしくは有機物の吸着剤として働くと考えられている。最近になってこの系の全固体型透明薄膜が作製され,その表面では光照射後の親水性の維持性能が優れるなど,酸化チタン単独の場合とは異なる,ユニークな性質が得られることが明らかになった。本稿では,この材料系について行われたこれまでの研究について,筆者らの内容も含めて紹介する。