抄録
エポキシ熱硬化性樹脂材料は接着剤のマトリックスとして多くの工業製品に適用され,軽量化を必要とされる有機無機複合機器の技術的進歩を牽引している。これには使用用途に合わせた要求特性を満足するための精密設計が重要となる。さらに新たな分析手法の応用がこれに寄与し,困難とされていた機能性の評価やその安定性の検証などが現在では高精度で実施されている。
本研究では,半導体用粘接着フィルム中のエポキシ樹脂の反応性について1HパルスNMRにより評価したところ,従来の評価法では差異の確認できなかった反応性および分子運動性が検出され,組成物であるアクリル共重合体の分子量によりこれが異なることがわかった。接着特性を比較したところ,硬化前の熱処理が接着性に大きく影響するものの,反応性の低い粘接着フィルムではこの影響がないことがわかった。さらにこれがアクリル成分の分子量に依存した分子運動性に起因するものと示唆される結果を得た。