金はナノサイズまで小さくすることで,光学特性や触媒特性が劇的に変化する。この金ナノ結晶は保護剤を含む溶液中で金イオンを還元する手法によって,簡便に得ることができる。保護剤は,金ナノ結晶の溶媒に対する分散安定性や形状を制御するために,必要不可欠なものである。本総説では,保護剤として長鎖アミンC18AAを用いることにより付与される,pH応答性金ナノロッドの水およびクロロホルムへの分散性とその相間移動について紹介する。このpH変化に基づくナノ結晶の可逆的な相間移動手法を応用することで,ナノ結晶の結晶面構成に基づいた分離を行うことも可能である。そこで,C18AAを用いた金ナノ結晶の結晶構造ごと,結晶形状ごとの抽出分離の例についても解説する。