色材協会誌
Online ISSN : 1883-2199
Print ISSN : 0010-180X
ISSN-L : 0010-180X
総説
精密重合誘起自己組織化によるナノ組織体のモルフォロジー制御
杉原 伸治
著者情報
ジャーナル 認証あり

2021 年 94 巻 11 号 p. 285-293

詳細
抄録

生体組織は,水環境や疎水環境において特異的な立体構造を有し,緻密な高次構造を形成し機能発現している。このような組織を合成高分子で構築するためには,根本の重合方法を再検討し,一次構造を制御し,集合体レベルで秩序化していく必要がある。これまでに高分子合成の分野では,リビング重合を代表とする精密重合技術が発展し,ある程度構造の明確な高分子を容易に合成できるようになっている。そのため,主として一次構造制御に用いられていたこれら精密重合系も,この10年で集合体制御法へと有効に使われるように大きく展開している。中でも,可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合は,メタルフリーで触媒残渣もほとんどなく,フリーラジカル重合をベースとした簡単な重合法であるため,自己組織化に用いられる最善の方法となっている。そこで本総説では,精密重合の特徴を巧みに利用した「重合誘起自己組織化(PISA)」について述べる。とくに,可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合 を用いた二種類の方法:RAFT分散重合およびRAFT乳化重合を用いたブロックコポリマー合成において,重合パラ―メータを巧みに規制することで,球状,ワーム状,トロイド,ベシクル,ジェリーフィッシュ,ランピーロッドなど,多彩なナノオーダーの集合体を容易に得ることができる。このような,直接モノマー混合物からナノ組織体へとアプローチする重合/ナノ組織化法をまとめた。

著者関連情報
© 2021 一般社団法人 色材協会
次の記事
feedback
Top