IgMは病原菌やウイルスに感染した哺乳動物の免疫細胞が初期応答として産生する免疫グロブリン(抗体)である。感染初期に産生されるため早期診断の指標に適していることや,糖鎖抗原に対しては高性能なIgMが得られるなど産業応用上の利点がある。一方で,抗体の主成分であるIgGと比べると不安定な性質のため, 精製方法をはじめとしてIgMを扱う技術の確立は難しく,抗体材料としては実用性に乏しかった。近年になり,IgMの精製方法を確立できる技術環境が整い始めたことから,その産業応用が現実味を帯びてきている。ここでは,IgMの精製に適したクロマトグラフィー用担体と,これらを用いた精製技術の最前線を解説する。