1971 年 44 巻 5 号 p. 205-216
減圧下, 空気中, ヘリウム中熱テンビン法で得た不飽和ポリエステル樹脂塗膜の加熱分解残量率曲線を解析し, 同一反応次数を示す温度領域およびその見掛けの活性化エネルギーを計算した。また残量率80, 60, 40, 20%の残量物のIRスペクトル, 元素分析値より熱分解過程を検討した。
1.フタル酸-プロピレソグリコールポリエステルは, マレイン酸-プロピレングリコールポリエステルよりも熱分解を起こしやすい。
2.マレイン酸フタル酸-プロピレングリコールポリエステルはスチレンで橋カケすると熱分解温度領域は高温に移動するが, 分解速度は大きくなった。
3.スチレソ化マレイン酸-フタル酸-プロピレソグリゴールポリエステルは, まず脱無水フタル酸反応が起こり, スチレンーマレイン酸共重合物が残る。減圧下では270~320℃ (残量率83.7~68.6%), E=21.8 kca1/mol, 330~380℃ (63.0~18.5%), E=37.6 kcal/molの2段階の分解反応であった。ヘリウム中では77.2~13.6% (320~410℃), E=37.1 kcal/molが主分解反応であった。空気中では270~300℃ (91.0~86.0%), E=12.5 kcal/mol, 310~360℃ (83.5~55.0%), E=22.3 kcal/mol, 370~410℃ (45.8~18.3%), E=38.4 kcal/mol, 490~530℃ (12.5~1.2%), E=147.0 kcal/molの4段階反応であった。
4.スチレン化テトラピド官フタル酸-フマル酸-トリメチロールエタンージエチレングリコールージプロピレングリコールポリエステルは, 水添フタル酸の使用により脱無水フタル酸反応の防止と主鎖の三次元化により耐熱性がよい。減圧下では330~420℃ (80.0~17.2%), E=37.6 kcal/mol, ヘリウム中では340~430℃ (75.0~14.4%), E=38.2 kcal/molが主分解反応であった。空気中では290~340℃ (90.0~77.0%), E=21.3 kcal/mol, 350~420℃ (71.0~25.5%), E=35.4 kcal/mol, 470~520℃ (17.6~1.0%), E=150.5 kcal/molの3段階反応で最も耐熱性がよかった。