色材協会誌
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油彩画におけるホワイト絵具の劣化に関する研究
広田 勝也信岡 聰一郎
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1982 年 55 巻 9 号 p. 623-629

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抄録

油彩画の重ね塗りによる上塗り塗膜の割れ, および塗膜の劣化原因を究明することを目的として, キャンバス上に鉛白, 亜鉛華, およびチタン白を主成分とする油絵具を塗布し, 塗膜の経時変化について, 生成物の分析を行ない, 重ね塗り塗膜との関係を調べた。
その結果, 次のような新しい事実を認めた。
(1) 活性顔料である鉛白と亜鉛華は, ビヒクルと反応して金属セッケンを生成するとされているが, その量的説明は不明であった。今回の実験でその両者において, 金属セッケンの生成量に相違のあることが認められた。
(2) 亜鉛華塗膜では, 亜鉛セッケンの生成が著しく, その亜鉛セッケンが上塗り塗膜の割れを生起させる主原因であると推定された。
(3) 従来, ビヒクルと反応し金属セッケンを生成する顔料は白亜化が少ないとされてきたが, 今回の実験では通説と異なり, 金属セッケンの生成とともに白亜化が促進された。一方, 不活性顔料のチタン白塗膜では, 金属セッケンの生成は認められず, また白亜化も認められなかった。

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