1984 年 57 巻 5 号 p. 239-248
フタロシァニングリーンやフタロシアニンブルーなどの有機顔料を含む塩化ビニル樹脂塗膜は, 比較的短期間の屋外暴露試験によって変色しやすい。この変色現象について種々の観点から検討し, 次の結果を得た。
(1) 屋外暴露試験によるポリエステル樹脂塗装鋼板の変色は主に白亜化の進行によるが, 塩化ビニル樹脂塗装鋼板の場合は, 白亜化と共に顔料の劣化が進行する。特に, フタロシアニングリーンは劣化すると脱色する傾向がある。
(2) 塩化ビニル樹脂塗膜中のフタロシアニン系顔料の劣化は, デューサイクルウェザーメータ試験よりも加熱試験によって再現できる。ただし, この場合には色差ではなく, a値やb値に色分解して考察する必要がある。
(3) 加熱試験による塩化ビニル樹脂の脱塩化水素量とフタロシアニン系顔料の劣化程度とは相関関係がある。このことから, フタロシアニン系顔料の劣化は, 塩化水素の還元作用によって進行すると考えられる。
(4) フタロシアニンブルーは顔料の極表層部が分解するが, 結晶構造は変化しない。これに対して, フタロシアニングリーンは顔料の極表層部が分解すると共に, 塩素の付加反応や結晶構造の変化も進行する。