色材協会誌
Online ISSN : 1883-2199
Print ISSN : 0010-180X
ISSN-L : 0010-180X
三角波法を利用したチタンの陽極酸化
羽田 忠義伊藤 征司郎石田 愼一吉村 長蔵
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 66 巻 5 号 p. 273-279

詳細
抄録

チタンの陽極酸化を, OVから直線的に最大電圧 (Vp) まで昇圧したのち, 同速度で再びOVまで降圧する, いわゆる “三角波” を繰り返す通電方法で行った。使用した電解浴は, リン酸, 硫酸の単独浴およびその混合浴と, その混合浴にさらに過酸化水素水を添加した浴, および水酸化ナトリウム単独浴である。
その結果, Vpが低く, 火花放電発生電圧以下の場合, 三角波の繰り返し回数 (n) によって皮膜の色は変化し, 水酸化ナトリウム単独浴以外の電解浴では, nが5回までは干渉色, 10回以上では灰色となり, このときの皮膜厚さは1.5~3.0μm程度であった。しかし, 硫酸単独浴, リン酸-硫酸系混合浴およびリン酸-硫酸-過酸化水素系混合浴中, Vpを150Vとした三角波で陽極酸化すると, 1回で灰色の皮膜が得られ, nを増やしても皮膜厚さはほとんど変化しなかった。これは, これらの浴においてはVpに達する前に火花放電が発生するためである。また, 得られた皮膜の表面をSEM観察した結果, nが増加するにつれて, ふくれや割れが多数認められた。水酸化ナトリウム単独浴からの皮膜は, 三角波を20回繰り返しても干渉色で, 1.0μm以下の厚さの皮膜であった。

著者関連情報
© 一般社団法人 色材協会
次の記事
feedback
Top