1998 年 71 巻 6 号 p. 367-374
銅 (II) 浴を用いてアルミニウムの陽極酸化と電解着色をハイブリッド浴法 (HBP) で行い.得られた着色皮膜の色彩や組成などについて, 従来法によるものと対比させながら検討した。
その結果, 従来法, HBPとも赤褐色の着色皮膜が得られたが, その明度 (L*値) は従来法の低濃度の硫酸着色浴<従来法の高濃度の硫酸着色浴<HBPの順となった。これらの着色皮膜について, 薄膜法によるX線回折測定と電子線プローブマイクロアナライザーによる皮膜断面の線分析を行い, いずれも孔底付近に銅が金属の状態で析出していることを確認した。本実験で得られた着色皮膜は, 時間の経過とともに退色する傾向がみられたが, 退色の起こりやすさは着色方法とは関係なく, 保存環境中の水分量や陽極酸化時に皮膜中に混入する硫酸根量に依存し, これらが多い場合に起こりやすいことがわかった。このような着色皮膜の退色は, 皮膜中に析出した金属銅が緑青類似の化合物に変化するたあに起こると考えた。