色材協会誌
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フェロセン修飾カチオン界面活性剤のミセル形成とベンゼン誘導体の可溶化に及ぼすフェロセニル基の酸化の影響
柿澤 恭史酒井 秀樹佐治 哲夫好野 則夫近藤 行成阿部 正彦
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1999 年 72 巻 2 号 p. 78-87

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抄録

長鎖アルキル4級アンモニウム塩の疎水鎖末端にフェロセニル基を導入した (11-ferrocenyl) undecyltrimethylammonium bromide (FTMA) のミセル形成およびベンゼン誘導体の可溶化に及ぼすフェロセニル基の酸化の影響を検討した。
FTMAのミセル形成濃度 (cmc) を表面張力法により検討したところ, 還元体 (FTMA+) は7×10-5mol/Lであったのに対して, 酸1化体 (FTMA2+) では約15倍の高濃度にあたる1×10-3mol/Lへとシフトした。また, FTMA+分子の50%を酸化した場合, cmcはFTMA+とFTMA2+の中間値である6×10-4mol/Lとなった。酸化によるcmcの変化は, 電気伝導度測定からも確認され, cmcはフェロセニル基の酸化にともない高濃度側にシフトすることが分かった。次に, 水への溶解度の異なる3種のベンゼン誘導体 (エチルベンゼン (EtBz), 2-フェニルエチルアルコール (PEA) ベンジルアセテート (BA)) のFTMA水溶液への可溶化について検討した。最大可溶化量は, いずれの被可溶化物を用いた場合もFTMAの酸化により減少した。また, ミセルを形成している界面活性剤1mol当たりの被可溶化物のモル数 (可溶化能) も酸化に伴い減少した。これは, ミセルを形成しているFTMAの分子数が酸化により減少したこと, ならびにミセル中の可溶化サイトが減少したためであると考えられる。さらに, 可溶化平衡定数に及ぼすフェロセニル基の酸化の影響を検討したところ, いずれの被可溶化物を用いた場合も酸化により可溶化されにくくなることが分かった。

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