抄録
葉面電位交流成分は, 養分の過不足によって変化するという報告があり, これを利用して植物の栄養診断技術に役立てようとする試みがある. しかし, 外部環境のうち, 光との関係については研究がなされているが, 湿度との関係については十分な研究がなされていない. そこで本研究はでチンゲンサイを湿度の異なる条件で栽培し, 葉面電位の交流成分に与える影響について検討した. 高湿度条件下では, 植物新鮮重, 培養液吸水量ともに増大した. 葉面電位スペクトラムは, 1.0∼45.0 Hzのうち, 16 Hz付近に極小ピークが, 18 Hz付近に極大ピークがみられ, 加湿条件下では18 Hz付近のピークが大きくなり, 16 Hz付近のピークは小さくなったことから, 高湿度条件下では葉面電位は大きな変動を示すことがわかった. 本研究では, 湿度条件と窒素栄養状態を変化させたが, 湿度条件を変化させた場合にピークの現れる周波数には変動がないが, 振幅の大きさに大きな影響がみられた. 植物の栄養状態は, 交流成分の特定周波数のピーク位置とその大きさによって知ることができるが, 環境条件の違いが振幅に影響をあたえるため, 葉面電位を用いた植物栄養診断時には湿度環境に留意すると, より正確な診断が可能であることが示された.