植物環境工学
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論文
水分移動特性に基づく有機・無機培地内水分環境の評価
宮本 英揮吉田 敏筑紫 二郎江口 壽彦伊藤 祐二
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2009 年 21 巻 2 号 p. 72-78

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抄録

水管理条件がヤシ殻培地中の水分環境に及ぼす影響を調べることを目的として,ヤシ殻と他の培地(砂およびロックウール)の保水性と透水性を測定した.そして,得られた測定結果と土中の鉛直1次元水分移動方程式に基づいて数値シミュレーションを実施し,各培地を同一環境下で用いた場合に予測される水分環境の差異について検討したところ,以下の知見を得た.
(1) ロックウールとヤシ殻は高い水分保持能を持ち,特に緻密な間隙構造を有するヤシ殻は,極めて高い保水性を有することが明らかになった.
(2) 全培地の透水性は,水分量の低下とともに指数関数的に低下した.なかでも,ヤシ殻は,透水性が他の培地よりも数オーダ低かったことから,水分移動が著しく阻害され易い培地であることが明らかになった.
(3) 底面給液条件における数値シミュレーションより,同一条件で水管理を行っても,培地内の水分の量および圧力は培地によって異なること,またその差異が保水性や透水性といった培地固有の水分移動特性に起因することが明らかになった.
(4) 多種多様な環境下における水分状態を予測できる数値シミュレーションは,作物の生育に適した水管理システムを構築するうえで有用な手法と考えられた.

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© 2009 日本生物環境工学会
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