植物環境工学
Online ISSN : 1880-3563
Print ISSN : 1880-2028
ISSN-L : 1880-2028
論文
カキ幼苗接ぎ木において加温期間を短縮する台木の育苗管理条件の検討
杉村 輝彦脇坂 勝
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 21 巻 3 号 p. 109-116

詳細
抄録

カキ幼苗接ぎ木法において実生台木苗(以下, 台木苗)の茎径と接ぎ木の活着率との関係, 接ぎ木時期やポットサイズが接ぎ木苗の成育に及ぼす影響を調査することにより, 加温期間を短縮するための台木苗の育苗管理条件を検討した. 12月下旬~4月中旬に加温ハウス内で播種し, 直径が12 cm以上のポットに鉢上げして育苗した台木苗(‘法蓮坊’)の茎径は, 休眠期には2月に播種した露地植えの台木苗と同等以上になった.‘富有’の幼苗接ぎ木の活着率は, 台木に子葉または本葉を残し, それら上の切り口の茎径が2.5 mm以上であると76.5%以上になった. 12月下旬~4月中旬に加温ハウス内で播種し, 12 cmポットに鉢上げして育苗した台木苗の子葉上の茎径が2.5 mmになる時期は播種時期の早晩に応じて5月上旬~7月中旬と推定された. 重油消費量は12月下旬~1月上旬の播種に比べて3月以降の播種で顕著に少なくなった. 幼苗接ぎ木苗の成育は12 cmポットでは5~6月接ぎ, 15 cmポットでは5~7月接ぎで, 休眠期には2月に播種した露地植えの台木苗と同等以上になった. 以上の結果から, 加温期間を短縮し, 休眠期に慣行の1年生台木苗と同等の成育が得られる幼苗接ぎ木用台木苗の育苗管理条件は, 日最低気温15℃前後, 日最高気温30℃前後の加温ハウス内で3月上中旬に播種し, 12 cmポットに鉢上げして育苗し, 6月に幼苗接ぎ木を行うことであると考えられる.

著者関連情報
© 2009 日本生物環境工学会
次の記事
feedback
Top