抄録
黄色LEDパルス光を用いたキクの害虫防除光源装置を開発するために,実際栽培において適用可能な放射照度の範囲を求めた.明期20 ms/暗期80 msの時間構造を有する黄色パルス光をオオタバコガとハスモンヨトウの複眼に照射し,放射照度1~1000 mW m-2の範囲においてERG信号波形を解析した.その結果,少なくとも1~100 mW m-2であれば,両種ともに点滅光として常時安定的,かつ持続的に視認していることが明らかとなった.続いて,黄色パルス光の放射照度(0,20,35,50 mW m-2)が秋ギク‘神馬’の開花および切り花形質に及ぼす影響を調査した.35 mW m-2までの放射照度は,発蕾までの日数,開花までの日数および切り花形質に有意な影響を及ぼさなかった.しかし,50 mW m-2の放射照度で育てたキクは,他の処理区と比較して,開花までの日数が3日間増加し,切り花長が9 cm大きくなった.以上の結果から,適用できる放射照度の上限値は,放射照度が35~50 mW m-2の範囲に存在し,少なくとも35 mW m-2であれば,開花遅延させることなく適用可能であることが明らかとなった