植物環境工学
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論文
切断を伴うコチョウランの微細繁殖への修正ムラシゲ・スクーク培地の適用-他培地との生存率の比較と培養特性の品種間差-
榎 真一高原 美規
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2014 年 26 巻 2 号 p. 109-117

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抄録

コチョウランの培養では切断面から多量のフェノール様物質が溶出し生存率が低下するため培養が困難である.このため切断を伴う培養に適した培地の開発を目標に研究を行った.開発した修正MS培地(以下PSR培地)と各種培地に,PLBをPSR培地上で培養増殖させ得られた長さ2 cmのシュートをPLBから切り離して置床し,シュート生存率を比較したところ,修正VW培地に比べ,PSR培地,NDMで値は非常に高かった.またPSR培地では旺盛な葉の展開,根の形成が見られ,シュートの生育に良好であった.培地中のフェノール様物質を定量したところ,PSR培地ではエタノール溶性,NDMでは水溶性のフェノールが多く溶出していた.またPSR培地にシュートを置床し,基部に生じた不定芽を切り離すことで増殖させる不定芽増殖法を市場での主要系統およびその交配親となった原種に適用し,品種間差を調査した.試験したすべての交配種および交配親として重要なPhalaenopsis亜属の種はほぼすべて容易に培養可能であり,これ以外の交配品種でも容易に培養可能であると示唆される.以上より,PSR培地は切断を伴うコチョウランの培養に適しており,この培地を用いた不定芽増殖法は市場の大多数の品種に適用可能であることが示唆された.

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© 2014 日本生物環境工学会
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